この記事は、水産仲卸の現場で使われている販売管理システム Sabaku の開発チームが、実際の導入・運用をもとにまとめています。
この記事の要点
- 物流の2024年問題は、トラック運転手の時間外労働に年960時間の上限が設けられた(2024年4月〜)ことで、モノが運びにくくなるおそれをまとめた呼び方。農林水産物・食品の物流は9割以上がトラックに頼り、卸売市場での荷待ち時間が長いのが課題。
- 改正物流効率化法で、2025年4月からすべての荷主・物流事業者に「積載効率の向上・荷待ち時間の短縮・荷役時間の短縮」の努力義務。2026年4月からは大規模な特定事業者に中長期計画・物流統括管理者(CLO)の選任などの義務が始まる。
- 多くの水産仲卸は取扱貨物9万トン以上などの「特定事業者」には該当しない(規模・業態により異なる)が、産地・大卸からの入荷が運びにくくなる・費用が上がる・時刻が読みにくくなる影響は受ける。
- 仲卸にできる備えは、入荷情報を早く正確に持ち、発注・締め・在庫の日繰りを整えて、入荷時刻のばらつきに強い運用にすること。
物流の2024年問題は、トラック運転手の時間外労働に上限(年960時間)が設けられたことで、 モノが運びにくくなるおそれをまとめた呼び方です。農林水産物・食品の物流は9割以上がトラックに頼り、 卸売市場での荷待ち時間も長いため、産地・大卸から市場に入荷する水産物にも影響します。 水産仲卸にとっては、入荷が読みにくくなることが締め・請求・在庫の日繰りにも響きます。
物流の2024年問題とは
物流の2024年問題とは、2024年4月からトラック運転手の時間外労働に上限が適用され、 運転手一人あたりの働ける時間が短くなることで、輸送能力が不足するおそれをまとめた呼び方です。 あわせて改善基準告示(運転手の拘束時間などのルール)も見直され、1年の総拘束時間の上限が短くなりました。 運べる量が減るぶん、運賃の上昇や配送の遅れにつながりやすくなります。
- 時間外労働の上限:原則は月45時間・年360時間で、特別な事情がある場合の上限が年960時間まで (2024年4月〜適用)。ただし一般の労働者に課される「月100時間未満・複数月平均80時間以内」 「月45時間を超えられるのは年6回まで」といった規制は、自動車運転の業務には適用されません。
- 改善基準告示の見直し:1年の総拘束時間の上限が3,516時間から3,300時間(労使協定による例外は3,400時間)に短縮された。
- 輸送能力不足の試算:対策を講じないと2024年度に約14.2%、2030年度に約34.1%の輸送力が不足するおそれ(NX総合研究所の試算・農林水産省。品目全体・全国を対象にした試算値)。
水産物流と卸売市場が抱える課題
水産物をはじめ農林水産物・食品の物流は、9割以上をトラック輸送に頼っており、2024年問題の影響を 受けやすい分野です。長距離輸送が多いこと、手積み・手降ろしといった手作業が多いこと、 そして卸売市場や物流センターでの荷待ち時間が長いことが、以前から課題とされてきました。 荷待ちは、到着時刻の集中による渋滞待ちや、荷下ろし場所の不足といった設備面の制約が要因になりやすいとされます。
- トラック依存:農林水産物・食品の物流は9割以上がトラック輸送。運転手不足の影響を受けやすい。
- 荷待ちの長さ:卸売市場での荷下ろし待機は、到着時刻の集中や荷下ろし場所の不足が要因になりやすい。
- 仲卸への影響:入荷が遅れたり不安定になったりすると、市場での仕分け・販売や、仲卸の締め・請求の起点がずれる。
改正物流効率化法で何が変わるか
2024年問題への対策として、物流効率化法(流通業務総合効率化法)と貨物自動車運送事業法が 改正され、段階的に施行されます。2025年4月からはすべての荷主・物流事業者に努力義務が課され、 2026年4月からは大規模な「特定事業者」に義務が課されます。仲卸の立場では、まず努力義務が 広く関わり、次に取引先である産地・大卸などの対応を通じて影響が及びます。
| 時期 | 対象 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2025年4月〜 | すべての荷主・物流事業者 | 積載効率の向上・荷待ち時間の短縮・荷役時間の短縮に取り組む努力義務(目安として、1運行の荷待ち・荷役を2時間以内、1回の受渡しを1時間以内など)。 |
| 2026年4月〜 | 特定事業者(取扱貨物9万トン以上の荷主など) | 中長期計画の作成、物流統括管理者(CLO)の選任、定期報告が義務になる。 |
多くの水産仲卸は、取扱貨物9万トン以上という規模には当たらず、その場合は「特定事業者」の 義務の直接の対象にはなりません(規模・業態により異なります)。ただし努力義務は広く関わり、 産地・大卸など取引先の物流が変わることを通じて影響を受けます。自社が特定事業者に当たるかや 要件は事業規模・年度で変わるため、詳細は所管する国土交通省の公式情報で確認してください。
水産仲卸にできる備え
仲卸には配車や輸送そのものを最適化する立場は小さいものの、入荷情報を早く正確に持ち、 発注・締め・在庫の日繰りを整えることで、入荷時刻のばらつきに強い運用にできます。入荷が 読みにくくなるほど、手入力に頼った運用は遅れやミスが起きやすくなるためです。
- 入荷を早く把握する:大卸の荷受データ(CSV)の取込や仕入入力で、入荷内容を手入力に頼らず早く正確に持つ。
- 発注のタイミング:入荷が読みにくいぶん、発注や在庫の確認を前倒しにして、欠品や過剰を防ぐ。
- 日繰りを整える:締め・請求を営業日ごとに整え、入荷や市場の休市日のずれで作業が固まらないようにする。
入荷や配送の乱れ、市場の休市日は、締め・請求・在庫の日繰りの起点をずらします。営業日ベースで 日々の数字を締めておく設計は日次締めの設計で詳しく扱っています。相場・仕入から締め・請求・入金までの一日の流れは水産仲卸の販売管理とはも参考にしてください。
まとめ
物流の2024年問題は、トラック運転手の時間規制で輸送力が不足しうる問題で、水産物流は特に 卸売市場の荷待ちなどの課題を抱えています。改正物流効率化法は2025年4月からすべての荷主・ 物流事業者に努力義務、2026年4月から特定事業者に義務を課します。多くの仲卸は特定事業者には 該当しない(規模・業態により異なる)ものの、入荷・発注・締めの日繰りを整える備えは有効です。 制度の対象・要件は事業規模や年度で変わるため、労働時間の規制は社会保険労務士など、物流効率化法の 適用は所管する国土交通省の公式情報など、内容に応じて確認してください。
Sabaku ではどうなるか
Sabaku に配車や輸送管理の機能はありません。できるのは、荷受CSVの取込や仕入入力で入荷情報を早く正確に持ち、締め・請求を営業日ごとに整えること。労働時間は社会保険労務士など、物流効率化法は公式情報で確認を。
入荷・仕入まわりの画面を見るよくある質問
Q. 物流の2024年問題とは何ですか?
A. トラック運転手の時間外労働に年960時間の上限が設けられた(2024年4月〜)ことで、労働時間が短くなり輸送能力が不足するおそれをまとめた呼び方です。農林水産物・食品の物流は9割以上がトラックに頼り、卸売市場での荷待ち時間も長いため、水産物の入荷にも影響します。
Q. 水産仲卸も改正物流効率化法の対象になりますか?
A. すべての荷主・物流事業者に向けた努力義務(2025年4月〜)は広く関わります。中長期計画やCLO選任などの義務(2026年4月〜)は、取扱貨物9万トン以上の荷主などの「特定事業者」が対象で、多くの仲卸はこの規模には該当しません(規模・業態により異なります)。自社が対象になるかは事業規模・年度で変わるため、所管する国土交通省の公式情報で確認してください。
Q. 仲卸は何から備えればいいですか?
A. 入荷情報を早く正確に持つことから始めます。荷受データ(CSV)の取込や仕入入力で入荷を手入力に頼らず把握し、発注・締め・在庫を営業日ごとに整えると、入荷時刻のばらつきや休市日のずれに強くなります。
出典
- 農林水産省「物流の2024年問題への対応」(令和5年度 食料・農業・農村白書 トピックス/年960時間の上限・輸送能力不足の試算・卸売市場の荷待ち)
- 厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータル/総拘束時間3,516→3,300時間〈例外3,400時間〉・時間外労働の上限=年960時間)
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制の概要(自動車運転の業務)」(一般則の月100時間未満・複数月平均80時間以内・月45時間超は年6回までは自動車運転の業務に適用されない・年960時間の上限)
- 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(改正法の施行日・努力義務・特定事業者・物流統括管理者)